油彩画に影響を与えた浮世絵


浮世絵は19世紀後半に陶器などの輸出品の緩衝材として日本から西洋に渡ったともいわれるが、その独特な色彩感覚や構図が現地で高い注目を集め、ジャポニズムと呼ばれるムーブメントを引き起こす一役を担った。モネやルノワールといった印象派の画家たちをはじめ、ゴッホやその周辺の画家たちも浮世絵から影響を受けたことは有名な話だが、特にゴッホは浮世絵を繰り返し模写したことで知られる。
ゴッホは32歳でパリに移住し、そこで浮世絵と出会いその構図や色彩に魅了された。オランダ•ゴッホ美術館には、歌川広重の«名所江戸百景亀戸梅屋敷»と«名所江戸百景おおはしあたけの夕立»をゴッホが油彩画で模写した作品が残されている。現在もなお世界中の芸術家たちに影響を与えるゴッホの独創的な作品が生まれた背景には、浮世絵から得た自由な着想もあったのだ。その後、印象派の作品群が日本へ紹介されるのと相まって、浮世絵は国内でも再評価されることとなった。浮世絵の保存における難点は、植物系の染料が使われていることで経年によリ色が褪せてしまうことにある。そのため、制作当初の姿を現在に残す浮世絵の作品は世界的にもわずかだ。東京藝術大学では、連携企業であるNHKプロモーションの協力のもと、奇跡的とも言える良好な保存状態を誇るスポルディング•コレクションの作品群の高精細画像を得た。これにより、褪色前の染料本来の美しい色彩や繊細なグラデーションに加え、版木の刷り跡までも再現したクローン文化財の制作に取り組むことが可能となった。
また、こうして制作した浮世絵のクローン文化財を同じくクローン文化財によって再現したゴッホの模写と並べて展示することを試みた。こうして、クローン文化財の技術によって、本来であれば叶うことの難しかった、オランダとアメり力にある二つの作品の国境を越えたコラボレーションが実現した。

フィンセント・ファン・ゴッホ  ≪雨の大はし≫(左上)、≪梅の開花≫(右上)
歌川広重  «名所江戸百景大はしあたけの夕立»(左下)、«名所江戸百景亀戸梅屋舗»(右下)

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クローン文化財 ー油彩画に影響を与えた浮世絵